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現代の名工に聞く、三木金物の魅力

ページID:0095039 印刷 文字を大きくして印刷 更新日:2026年6月26日更新
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長年にわたり第一線で活躍する職人に、三木金物への思いや仕事へのこだわりを伺いました。

宮奥 淳司 さん(左官職人)

宮奥淳司さん

 1300年前に創建された薬師寺。その中でも東塔は創建当時の姿を残す唯一の建物です。平成21(2009)年から12年かけて行われた全面解体修理で、私は左官の頭領を務めました。 

 伝統的建築物に携わる仕事で大切なのは、その建物がどのような歴史を辿り、人々にどう見られ、どんな思いを受け継いできたのかを理解することだと思っています。背景を知り、敬意を持って向き合わなければ、良い仕事にはならないと思います。

 仕事に欠かせない左官鏝は、自分の手に馴染み、疲れにくいことが大切です。左官の仕事には、短時間で仕上げることが求められるものもあれば時間をかけて丁寧に施工するものもあります。疲れにくい道具を使うことで仕事に余裕が生まれ、その余裕が安定した仕上がりにつながります。

 良い道具とは、単に性能だけでなく、使う人を支えてくれる存在だと思います。現代において、左官鏝の特注や修理に応えてくれる鍛冶職人がいるのは三木ぐらいではないでしょうか。私自身も鏝の修理や調整をお願いしています。

 時代とともに伝統技術は減りつつありますが、大切なものを未来へつなぐ人々がいます。その思いが、日本の良きものを次世代へ受け継ぐ力になると信じています。

薬師寺東塔・かまど

薬師寺で創建当時の姿を残す東塔(写真左の右側) 。宮奥さんは全国から姿を消しつつあった「かまど」をつくる左官技術の保存にも取り組まれています。

山脇 一夫 さん(左官職人)

山脇一夫さん

 世界文化遺産・国宝姫路城の漆喰壁や屋根目地の補修・修理を長年手掛けています。伝統的建築物の修復は「建築当時の姿を残す」ことが基本です。そのため、材料や道具も可能な限り当時に近いものを使い、昔ながらの工法で施工を行っています。

 左官の仕事では、塗る素材や場所によってさまざまな鏝を使い分けます。私たちが使う鏝の多くは三木産です。特に鍛造の鏝は現在ではほとんど三木でしか作られておらず、強度や性能の高さだけでなく、仕上がりの違いが出ます。この鏝でなければできない作業があり、伝統建築の修復には欠かせません。

 また、鏝は使い続けるうちに反りや曲がりが出てくるため、修理を三木の職人さんにお願いしています。道具を作る人と使う人、その両方の技術があってこそ、伝統建築の修復は成り立っています。

 修復で使う壁土は、古い土を再利用しながら新しい土も加え、発酵させることで強度を高めています。こうした手間を重ねることで、建築本来の美しさや強度を保っています。

 最近は和風建築が減っていますが、日本の建築の美しさは職人の技術だけでなく、それを支える道具によって守られていることを知ってもらえたらうれしいです。

姫路城・山脇組

世界文化遺産・国宝姫路城(写真左) 。山脇組は90年以上にわたり、姫路城の修復を担いながら数多くの伝統的建築物の保存・修復に携わってきました。

海老崎 粂次 さん(建築大工)

海老崎粂次さん

 職人が道具に求めることは、いかに自分の思いのままに機能してくれるかどうかです。三木金物の評価は非常に高く、錦帯橋「平成の架け替え」の際には、私も道具を作ってもらいに三木市を4回ほど訪れました。

 海外で日本の建築技術を伝える講習会を開くと、熱心な参加者が集まり、建築技術と並んで道具にも強い関心が寄せられています。外国人が普段使う道具は腕力に頼った設計のものが多く、三木金物をはじめとする日本の道具に触れた参加者はその使い心地の良さに引き込まれていました。

フランスやドイツなどでは、住宅建築をはじめとする一般的な建築現場で、今もなお伝統的な技術や道具が求められています。一方、日本では作業効率化の観点から機械設備の導入が拡がり、手工具(人力で作業する工具)をあまり使ったことのない職人が増えてきています。

 伝統技術が紡ぐ「日本の美」を絶やさないためにも、最上の仕上がりをめざすには手工具が必要であることを、道具を作る側、使う側双方からもっと広めていく必要があると思います。

錦帯橋・厳島神社

錦帯橋(写真左)の平成の架け替え工事の棟梁や厳島神社(写真右)の修復工事を務めた海老崎さん。製材から組立までのほとんどの工程で三木金物を使用しています。

福田 喜次 さん(宮大工)

福田喜次さん

 宮大工として、神社仏閣、一般建築、播州祭り屋台の設計・製作を行っており、現場ではいつも三木金物の道具を使っています。道具の良し悪しは、鋸であれば切れ味で判断されることが一般的ですが、より精緻さが求められる現場では、三木金物のように、手に伝わる感覚から木の繊維を感じ取れる“心地ある道具”が必要です。

 時代の変化で建築工法が変わったことによって、手工具を使う職人や鍛冶職人は年々減っています。このまま減少が続き、道具が造られなくなってしまえばプロの現場の仕事はできなくなり、やがて伝統的な日本建築の技術もついえてしまうと考えています。

 我々としても何かできることはないかと、これまで伝統大工に関わりのなかった職人を集めて、技術の保存や向上を図るための団体を立ち上げ、その中で優れた道具とはいかなるものかを伝える取組を始めました。日本の素晴らしい建築技術を後世に残すためにも、三木金物の発展は必要不可欠です。作り手と使い手の交流を深めるとともに、各々ができることを考える時がきていると感じます。

松原八幡神社・屋台修復の写真

松原八幡神社の秋祭りの様子(写真左) 。福田さんは松原八幡神社や各地域の屋台の修復などを手掛けています。また、能登半島地震で大破した輪島市黒島地区の神輿の修復を行いました。