以前から広報紙やホームページ、SNSなどで情報発信を行ってきたものの、市民から「市が何をしているのか分からない」との声を受け、情報発信の改善に乗り出した三木市。
「一体何から始めるべきか.....」と悩んだ担当者は、2021年11月から登用を開始した外部アドバイザーに相談。
外部アドバイザーとは⇒「突拍子もないアイデア、大歓迎!」 広報の課題に取り組む外部アドバイザーの登用決定!
アドバイザーから「まずは現状把握と目標設定、そこからその差を埋めるための課題把握をすべきです。」との回答がありました。
そこで、2021年11月30日に3名の民間外部アドバイザーと15名の市職員(広報経験者や情報発信に関する職員提案企画者など)が集まり、ファシリテーターの浅川淑子さん(広報・デザインアドバイザー)のリードのもと、情報発信の現状や今後の目標などについて意見を出し合い、最後にこのプロジェクト会議の名称を決めました。
会議の名前は「一面を飾る広報会議」に決定。
それでは、本プロジェクトの方向性はどうなったのでしょうか――。
今回の記事では、話し合った過程自体が面白く、大事な要素であるため、参加者の声を中心に少し長文となっています。
(★がついている発言者は三木市広報アドバイザー)
(市側の出席者一覧はページ末尾に添付)
【★浅川さん(ファシリテーター)】
皆さんにとっての理想の広報において、大切なことは何ですか?
【馬場さん】
情報の掘り起こしと見せ方です。
各部署が自分たちがやっていることを当たり前だと思い込みすぎて、良い取組をしていても積極的な発信のないまま埋もれてしまっていることがあります。
そのようなものも広報で取り上げ、良い見せ方をしていくことが大切かと。
【中尾さん】
国が動いている施策テーマと連動した発信が必要ではないでしょうか。
今が旬のことを、市が考えるメリットとともに具体的に発信していくべきだと思います。
【川上さん】
基本的に関心がない取組には、発信しても誰も反応しないと思います。
発信する事業内容が広報に適しているかを取捨選択していくことも必要なのでは。
【★谷ノ内さん】
これは秘書広報課だけの課題ではなく、三木市全体の課題。
三木市の職員が仕事をしていく上では、総合計画のスローガン「誇りをもって暮らせるまち」という大目標があると思います。
各々が普段の仕事の中で「市民に誇りを持ってもらう意識をもつこと」がまずは大切ですが、市民に誇りを持ってもらうには、やはり発信をしないと何も伝わりません。
「担当部署だけがやればいい」という認識ではなくて、「自分たちの仕事が市民にどう見られているか」という意識や、「どうしたら伝わるのか」ということを意識している自治体や企業は話題も元気もありますね。
【★川副さん】
私が考える広報に大切なことは3つ。
1つ目は「誠意ある行動」。
受け手は「市が発信する情報は正しい」という前提で見てくれています。そのため、嘘はつかないこと、間違っていたらちゃんと「ごめんなさい」と謝るなど、基本的な姿勢が重要です。
2つ目は「誰もが発言しやすい場所」。
これがあるかないかで、組織力の成長に大きな差が出ます。
3つ目は「熱意」。
広報って営業やセールスに近いものであると思っています。情報を使ってお客様に行動へ移してもらうには、我々が熱意をもって「この情報を届けるんだ。」という気持ちが大事です。
【★浅川さん(ファシリテーター)】
私は広報や事業などを考える時に、まず「1つの木」に例えて考えます。
広報紙やホームページを作る、SNSで発信するなどは全て「葉っぱ」や「果実」の部分だと思っています。
その果実を実らせるためには、理念やキーワードなどに当たるしっかりとした「幹」が必要です。
そこにツールがあって初めて「果実」が実り、「葉っぱ」が育つと考えています。
さらに大事な部分は「根っこ」の部分です。
これは職員一人一人の行動や体制に該当しますが、その中でも私が大切にすべきだと思うところは「思いやり」だと思っています。
これは、広報担当者としてメディア関係者がいたらその人たちに誠意をもって行動すること、職員間で部署を越えても思いやりをもって行動すること「忙しいから丸投げ」などは思いやりのない行動だと思います。相手の動きを先回りして行動することなどが思いやりにつながると考えています。
あとは自分に対する思いやりも重要です。
自分が大変で周囲からたくさんの依頼がきたときに、「自分は困っています」と相手に伝えることも自分に対する思いやりではないでしょうか。
そして、「次からはこのようにしてくだい」と相手にリクエストすることも一つの思いやりだと思っています。
それらがすべて合わさって良い広報活動ができるようになると考えています。
「広報」って広く知らせるという意味もありますが、「PR(パブリックリレーションズ)」という人間関係を表す言葉もあります。この辺りを大切にすると良い広報になっているのではないかと思います。
【戸田さん】
現状は使っている媒体が多すぎるのではと感じています。
例えばホームページをメインの媒体として、他の媒体をホームページへの誘導に使うなど、各媒体の活用方法について整理が必要ではないでしょうか。
【清水さん】
もっとストーリー性のある広報ができれば良いなと考えています。
このプロジェクトを通して、受け手に「なるほど!このためにその取組をやってきたんだね!」と思ってもらえるような発信ができるようにしたいです。
【★川副さん】
私は三木市の広報は、いろんなことができていると思っています。
元三木市民として、ホームページなどは以前に比べてとても見やすくなったし、SNSなどいろんなツールを使って情報発信をされようとしているなと感じます。外から見てそれが伝わるかは別問題なのですが、自分たちがやっていることを認めてもいい部分が多いのでは。
【★浅川さん(ファシリテーター)】
ここからは、この半年間でどんな成果を出すのかについて考えてみましょう。
日々の行動を変えていくために、理念やキーワードを検討することもありますが、ここではより分かりやすい数値目標を決めて、成果につなげたいと思います。
まずは皆さんに「どのようなことなら数値化できるか」を考えてみてほしいです。
【★谷ノ内さん】
皆さんが納得した指標をつくることが大切です。そのために、まず「めざす先をどこに定めるか」を共有すべきかと。
市長はこの課題に市として取り組みたいとおっしゃっていましたが、例えば「メディアの掲載を増やす」だけなら秘書広報課の取組だけで終わってしまう可能性があります。
【清水さん】
今回のプロジェクトでやりたいことは、この会議を今後に繋げるために、いかにして人材を育てるか、その仕掛けになる会議にできればいいと考えています。
ここに参加した人は自分の部署に帰ったときに「今日こんな会議だった」という話をすると思います。これも一つの広報活動ではないでしょうか。
「参加してよかった」と思える会議をつくることは難しいです。ただ、それをめざすことで関わる人が増え、この会議にも参加したいという職員の思いにつながるのではないでしょうか。
指標の一つに人材育成に関するものを入れて、何かが変わっていく姿を皆さんと共有したいです。
【中尾さん】
役所の情報は面白いものがあまりないと感じています。
職員は仕事にはまじめに取り組みますが、日々の仕事にスパイスを入れるというか、もう一工夫あればなと。
そういったことを含めて、人材育成を進めるのは良いことだと思います。
【常深さん】
職員の広報マインド、情報発信に対する考え方が変わらないとこのプロジェクトの成果はでないと考える中で、積極的に発信するという意識の変革が一番大事だと思います。
ただ、その変化だけでは自己満足に終わる可能性があるので、もし測定できるのであれば、「市民の方にどれだけ受け取ってもらえたか」など、対外的な指標もあれば広報が良いものになっていくのではないでしょうか。
【三木さん】
職員の意識を高めるためにも、分かりやすい指標としてメディア掲載に関するものは入れておきたいです。
「最近メディアに載ることが増えたな」という雰囲気がある方が、皆さんのやる気につながりやすいと思います。
【村上さん】
分かりやすい指標ということであれば、SNSのフォロワー数は目に見えて分かりやすい指標です。
また、職員のマインド面は非常に重要なので、この会議に参加する人数や意識調査などを、時期を変えて調査することで意識の変化が測れるのではないかと考えます。
【中尾さん】
各部がもっているツイッターの発信本数を部ごとに決めていくなど、強制的に取り組む中で見えてくるものもあるのでは。
【戸田さん】
発信の数が少なくても、市が広報でしっかりと発信してくれていると住民に思ってもらうことはできると思います。
本数を増やすことに注力するか、少しの情報でも発信していると感じてもらえるのかのどちらをめざすのかの整理をしておかないと、本当の成果指標がぶれる可能性があります。
【★谷ノ内さん】
メディア掲載に関する指標では、三木市としてベンチマーク※したい市町村を設定することも目標設定の上で有効です。
(※ベンチマーク: 複数の組織(市)の成果を比較すること)
数だけ打ってもその数に意味があるのかという話になる場合があります。
例えば他市よりも掲載数で上回るとかがあれば見ている人も分かりやすいと思います。
【★川副さん】
ベンチマークするものは他市だけでなく、過去の三木市でも良いです。
個人的にはいくつか目標を立てても良いと考えています。
「できるもの」、「ちょっと頑張ればできるもの」、「かなり頑張らないできないもの」があればモチベーションにもつながるのではないでしょうか。
【三木さん】
発信の「質」を数値目標とする場合に、どのような指標が考えられますか?
【★谷ノ内さん】
例えば全国紙に掲載される数を指標としてはどうでしょうか。
三木市には神戸新聞三木版があり、市の情報が掲載されやすい環境があるものの、全国紙に取り上げられる頻度はそこまで多くないと思います。
掲載されるハードルが高い「神戸新聞 三木版以外の面」や「全国紙」に掲載される情報は「質が高い」と仮定しても良いかと。
【岡部さん】
メディア掲載については、新聞やテレビの掲載数・取材を受けた数などが指標案として挙がっていますが、メディアを通して発信された内容については、多くの方が検索するため、ホームページやSNSの閲覧数にも影響が出ると思います。
ここを調査することで、受け手にとっての情報の関心度が測れるのではないでしょうか。
【★浅川さん(ファシリテーター)】
ここまで皆さんからの指標案をお伺いする中で、大きく3つの指標案に分類できると思いました。
1つ目は「市民にとって分かりやすい指標」、
2つ目は「メディア露出に関する指標」、
3つ目は「職員に関する指標」です。
この3つについて、それぞれの指標案を秘書広報課で検討いただけますか?
【秘書広報課】
承知しました。
【吉田さん】
今日参加して、皆さんがいろんな切り口、考え方を持たれていて、それをまとめることはとても難しいことだと感じました。
【★谷ノ内さん】
今日はありがとうございました。
会議の中で、メディア露出を強化されたいとの意見がありました。
記者時代の経験から言うと、メディア掲載のためにはまず企画が大事。各部署の施策検討の段階からどこを売り込んでいくのかを考えないといけない。
それと際立つ人物を売り込んでいく必要があると思います。
ここについては今後もアドバイスできますので、引き続きよろしくお願いします。
【★川副さん】
本日はありがとうございました。
参加させていただいて、このチームは多様性が一つの強みであると感じました。
この強みを活かせるようなアドバイスを今後していきたいです。
すごく楽しかったですし、浅川さんの進行もありがとうございました。
【★浅川さん(ファシリテーター)】
皆さん貴重なお時間とたくさんのご発言をありがとうございました。
目標に向けてのご意見が出そろったことと、皆さんのやる気を強く感じ取れて良かったです。
半年間ではございますが、この会議がさらに楽しくなるように頑張りたいと思いますので、次回もよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
一面を飾る広報会議(2021年11月30日) 市出席者 [PDFファイル/87KB]